marikolog

ヴァイオリン奏者として活動している水野真梨子のブログです

VIOLINと音楽とうさぎと教室での毎日を綴ります。
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レガート バイオリン教室(精華町光台 * 奈良市富雄北)

忘れられないあの日

一度だけ、小さな子を虐待している男を真横でみたことがある。

4歳か、5歳ぐらいの男の子だった。

学生だった私は、昼間の空いた時間、近鉄電車に揺られていた。
そこに菖蒲池から乗り込んできたのが、母親と男の子、そして父親なのか恋人なのか、大柄で髪が長めの、目の血走った男だった。

母親と男の子が私と同じ側の座席へ、
そして男が向かい側の座席へ座った。

電車が動き出すとすぐ、男が信じられない行動に出た。
いきなり男の子を向かいの座席から跳び蹴りして蹴り倒し、
クツのまま頭を踏みつけた。
ギャー!と泣き叫ぶ男の子に、なおも跳び蹴りし、「お前が泣くから人が見るやろうが!」と怒鳴りながら同じ車両の乗客を見回す男。

恐ろしかった。

ママ!ママ!とすがりつく男の子を無視して遠くを見ている母親。
母親の腕をつかむ男の子の細い腕に、たくさんのアザが見えた。

私は何も出来なかった。恐ろしくて何をどうすれば良いかわからなかった。
対峙する勇気が無かった。
どうしようどうしよう、と心臓をバクバクさせて、母親はどうしてやめさせないの!!と心の中で泣きそうになりながら座って固まっているしかなかった。
他の乗客は、私が降りた後どうにかしただろうか。

あの子はもう大人になっていると思うけれど、どうすればよかったんだろう、と今でも虐待のニュースを見るたび考えてしまう。

今だったらどうする?
1人だったらやはり何も出来ないかもしれない。あの時は持って無かったスマホで動画を撮る?それでどうする?警察にいく??
殴られてでも男の子をかばう?余計にエスカレートするかもしれない。でもそうすれば、私への暴行で警察に突き出せるか。いやいや、今だと、息子が近くにいたらそんな行動とれないかもしれない。
男の子にとって、何が1番いいのか、よかったのか、まだわからない。